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巻頭言


杉浦 哲朗
すぎうら てつろう Tetsuro Sugiura

高知大学医学部病院長・高知大学医師会会長

本文

 平成22年4 月1 日より高知大学医師会会長を務めさせていただき,はや4 年が経とうとしています。この間,病院では安心で安全な医療が求められる一方,高齢化社会と医療の高度化がますます進んだ結果,医療は複雑化し,医療現場は過剰な臨床業務に追われるようになってきました。また,経済的にも社会的にも厳しい環境の中で,大学附属病院もコスト意識を持って臨床業務を行わなければなりません。このような状況下で文部科学省から提示された大学改革実行プランに沿って高知大学医学部では地域の実情に合った医学部のミッションの再定義を行いました。設定した4 項目のうち特に地域との関連性の高いものとして以下の2 点があります。
○ 高知大学の理念及び医学部の理念並びに建学の精神に基づき,地域特性に根ざした医学・医療の推進に寄与し,国際社会にも貢献しうる優れた医師・医学研究者等を養成する。
○ 県内の地域医療を担う医師の養成を積極的に推進する。特に高齢化率の高い高知県の高齢者医療に貢献するため,家庭医や災害・救急医の養成等,今後の地域医療を支える人材の育成を積極的に推進する。また,高知県と連携し,県内の地域医療を担う医師の確保及びキャリア形成を一体的に支援し,医師の偏在解消に貢献する。高知大学医学部にはその基本理念である「地域に密着した先端医療の推進と人間味豊かな医療人の育成」に基づき医学・医療を推進する責務がありますが,平成16年に新しい臨床研修制度が導入されて以降,関東,関西に研修医が集中したことにより,地方大学の入局者が激減し,地域医療への貢献,研究推進能力の低下が叫ばれています。高知大学も例外ではなく,最も大きな影響を受けている大学のひとつですが,このような厳しい状況の下,教育・研究・診療の三本柱の充実・発展に対する方策を実行していかなければなりません。教育は,未来の医療を担う優れた医師の育成です。近年,医学・医療の目覚ましい発展に伴い学生の学習量も膨大となり,医学生はそれらの知識を効率的に習得しなければなりません。
さらに,学生が卒業時までに身につけておくべき必須の実践的診療能力には,知識のみならず医療に対する技能や態度も含まれます。本学では,教職員のマンパワー不足,日常臨床業務の負担など厳しい条件ではありますが,変化する医学教育へ効率的に対応し,医師国家試験合格率の向上や学生の満足度向上に結び付けようと努力しています。また,医師育成のためには基礎・臨床医学教育,クリニカルクラークシップ,初期臨床研修そして専門医研修教育と一貫した魅力あるプログラムが不可欠であり,そのためには高知大学医学部を中心に県行政,県内の医療機関が一体となって「チーム高知」として医師育成プログラムを構築し,医師養成体制を担って行く必要があります。また,研究は未来の医学に貢献しうる真実の探求でありますが,高知においても医学の発展と医療技術水準向上へ貢献できる研究を推進することが若者を定着させる一助となると考えています。一方,診療は過去の研究で明らかにされた事実や最新の知識に基づく診断・治療の実践の場であります。高知大学医学部附属病院は地域の中核病院として高度医療の提供,地域医療機関へ医師の派遣を行う医療機関でありますが,大学・県・医師会がお互いに情報を共有し,協調しながら県内の地域医療を担う医師の養成を積極的に推進していかなければなりません。すなわち,限られた人員でこの教育・研究・診療の三本柱を充実させるためには,個人の意識,個人の行動が重要となってきます。ここで思い出されるのが,私がアメリカ合衆国で過ごしていた小学6 年生の時に聞いたJohn F. Kennedy の大統領就任演説です。当時,小学生ながら私にとってそのスピーチは実に印象的でした。
「アメリカ国民の皆さん,あなたが国から何をしてもらうかではなく,あなたが国のために何ができるのかを問うのです。世界中の同胞市民のみなさん,アメリカがあなたのために何をしてくれるかではなく,私たちが一丸となって,人類の自由のために何ができるかを問うのです。」この言葉にあるように高知大学医学部の学生教職員,県の職員,そして医師会員の皆さまが「私が動かしている,私が役に立っている」という精神のもと,力を合わせて地域医療のさらなる充実を図るとともにわが国の医療の発展に寄与することが我々に課せられた最大のミッションであると考えます。
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