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第20巻発刊に寄せて ─ これからの高知県,そして医療は ─

高知県医師会長 岡林 弘毅

本文

本誌は高知市医師会医学雑誌として創刊し,第18巻から高知県医師会医学雑誌として継承さ
れ,ここに,記念すべき第20巻が発刊されますことを嬉しく思いますとともに,創刊以来,一
貫して編集に携わり,立派なものに育てていただいております猿田編集長に深甚なる感謝と敬
意を表する次第です。
 共に若かりし頃,「医師会として医学雑誌を出しましょう」との猿田先生の熱心な話に共鳴し,
いっしょに,発刊に向け汗したことが懐かしく思い出されます。
 20年と申しますと,人間では成人の歳でございます。これからも,本誌が益々充実し,一層
の信頼・評価を得ていってくれますよう祈念しております。
 さて,この20年間で,高知県の人口は7万8千人減少し,高齢化率が10ポイント以上増えてい
る状況において,これからの20年間はどうであろうか。
 高知県の2005−2035人口予想通常版情報によると,20年後の2035年の予想値は59万6千人で増
加率74.88%の大幅な下落予想となっており, 団塊の世代が75歳を迎える2025年の予想値は67
万1千人である。高齢化率の将来推計では,2035年までの20年間に,更に,5ポイントを超える
増となる予想である。
 全体の45%近くを高知市が占める特異な人口構成の高知県の人口は,80万人を割り込んだ
2000年から2005年までは,ほぼ,横這い状態で,2005年10月の国勢調査では79万6千人であるが,
それが2014年9月の高知県推計人口調査では73万8千人にまで落ち込むと見られている。その落
ち込みを2次医療圏毎でみると,中央で激しく,57万1千人から51万人と6万1千人の減少であり,
幡多で10万1千人から8万9千人と1万2千人の減少,高幡で6万6千人から5万7千人と9千人の減少,
安芸で5万8千人から5万人と8千人の減少となっている。
 一方,2010年の国勢調査による高知県の65歳以上割合である高齢化率は28.4%で,市域別に
みると,高知市23.6%,室戸市38.3%,安芸市31.9%,南国市25.5%,土佐市29.8%,須崎市
31.9%,宿毛市29.5%,清水市39.2%,四万十市29.8%で,高知市と南国市以外は29%を超え
ている。そして,2007年5月の国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計による高知県の高
齢化率の推移は,2015年32.3%,2020年34.6%,2025年35.8%,2030年36.7%,2035年37.4%の予
想となっている。因みに,大豊町の高齢化率は2009年に50%を超え,2012年には52.7%であり,
当然ながら,若年人口の減少著しい町村の高齢化率が市域よりも高率とならざるを得ない。
このように,全国に10年先行するとされる高知県の人口減少と高齢化が急速に進行している
実態が浮かび上がってくる。「自然減」にみる出生率の低下がいわれるなかで,それ以上に若者
の県外流出に歯止めがかからない状況は無視することができない。いわゆる「社会減」は14年連
続であり,2014年住民基本台帳人口移動報告によると,転入者9,018人に対し転出者11,197人と
転出超過2,179人で,その内15歳〜24歳が1,779人(81.6%)となっている。転出超過は高知市581
人,いの町254人,安芸市201人等27市町村で,転入超過は四万十市64人,香南市45人,佐川町
34人等7市町村である。流れとしての都市部一極集中は変わらないにしても,その集中一極か
らも県外流出がみられ,将来予想の裏付けとして「自然減」・「社会減」が指摘される訳で,その
歯止めとなる対応策が打たれない限り進行を止めることはできない。
 地勢的には,高知市から距離にして室戸まで75km,宿毛まで145kmと東西に長く,高規格道
路の整備状況に関しては,東はまだら状態の芸西村止まり,西は四万十町窪川までである。し
かし,道路事情が改善し,中心部への利便性が高まり,アクセス時間が短縮されればされるほ
ど人口流出が大きくなるという矛盾を孕んでいる。郡域における人口減少と高齢化は不可逆的
状況にあり,過疎化の進行が止まらない。限界集落がいわれだして久しいが,消滅状態はあっ
ても再生は聞かない。過疎化は医療においても無医地区拡大を助長している。
 医療資源に関しては,人口10万人当たりの医師数は全国平均を上回り,全国4位に位置して
いるとはいえ,人口密度からすれば当然なのかもしれないが,中央医療圏に8割以上という特
異な偏在を呈し,郡域での病院の医師不足が顕著である。それに,40歳未満の若手医師につい
ても中央医療圏偏在は免れず,しかも,年々減少傾向にあり,2002年から2012年の10年間で750
人が533人と217人(29%)も減っている。また,人口10万人当たりの病床数が全国1位(一般病床,
療養病床共に1位で,精神病床は6位)であるのに対し,病床数あたりの医師数は全国45位,看
護職員に至っては全国47位(2011年)という奇異にも映る医療環境にある。そして,一般病床,
療養病床の8割が中央医療圏に集中し,医療機関数においても8割が中央医療圏にある。このよ
うな状況は,今後,変わることはないと思われる。
 日本全体の外来患者数は2000年から2013年までの間に1割以上の減少をみており, 単純思考
が許されるならば,「住民減は,即ち,患者減」であり,これから,高知県の患者数も減少し続け,
医療提供体制に大きな影響をもたらすことになる。
 以上のような状況に鑑みて,これからの郡域における「医療の集約化」は必然性を有している
と認めざるを得ない。
 二次医療圏でみると,医療資源の集中する中央医療圏の医療提供体制については,余り,問
題とはならないが,その他の医療圏,とりわけ,高幡・安芸医療圏が問題となる。
 幡多医療圏については,基幹病院としての県立はたけんみん病院の機能強化を図るのは勿論
のこと,救命救急センターの併設を視野に,地域医療機関との連携体制を確実なものにしてい
くことにより,歴史的経緯を踏まえた地域完結型医療を確立できると考えているが,現状の医
師不足を解消するとともに,高知大学からの継続的な医師派遣が確実なものになることが絶対
的必須である。
高幡医療圏は核となる基幹病院たる公的総合病院がなく,このことについては高知赤十字病
院の津波対策上移転の必要性に絡め誘致がなされることを望むも叶わず,もって,2次医療圏の
体をなしていないのが現状である。民間病院の機能連携を進める必要があるが,不足機能や高
機能医療に関しては中央医療圏とりわけ高知市に依存せざるを得ない。特に,中山間・僻地に
おける救急医療の搬送体制の整備・確立が求められる。ドクターヘリ・ドクターカー活用の依
存度が高まると思われるが,県境部においては隣県病院との連携強化を,一層,進めていく必
要がある。そして,分娩施設皆無の現状打破に向け産科医の手当てを急ぎ,休止施設の復活を
果たす必要がある。
 安芸医療圏は県立あき総合病院が核となる基幹病院に位置付けられることから,その整備を
進める必要がある。従前から,住民の顔は高知市を志向しており,特に,室戸からの流れを安
芸市でくい止めるために,ハード整備が成った県立あき総合病院のソフトの充実が最優先課題
となり,高知大学の絶対的な支援体制の確立が急がれる。その上で,地域医療機関との連携体
制を進め,当医療圏においても地域完結型医療を確立すべきである。一方,室戸から県境にか
けては現状アクセスの利便性から徳島県医療圏に依存する部分が大きいのは否めない。
 これからは,県に地域医療構想の策定が求められ,人口動態,高齢化率,患者動態,疾病構造,
医療費等のデータをもとに構想医療圏毎(原則2次医療圏)の機能別(高度急性期・急性期・回復
期・慢性期)必要病床数が毎年提示されていくことになる。既存病床への直接的影響はないが,
ただ,病床機能変更時に不足機能は認められるが充足機能は認められないことになり,6年毎の
地域医療計画見直しによる2次医療圏毎の基準病床数への絡みもあり,2次医療圏における基幹
病院への医療の集約化を図って行く上で制約を受け得ることになる。
 これからの高知県の医療供給体制は,高知大学附属病院と高知市内の公的総合病院,それに,
県立はたけんみん病院と県立あき総合病院を核として構築されるネットワークを中心に考えて
いく必要があり,県立はたけんみん病院と県立あき総合病院は医療集約の拠点としての役割を
担うことになる。そして,その医療集約拠点病院から医師が地域へ出向く体制整備も図られる
べきであり,その診療拠点として県の進める集落活動センターが考えられる。
 そのために求められるのは, この医療集約拠点病院への高知大学からの医師の派遣であり,
安心して出向できるローテーションの確立である。当然,各教室における医局員の確保,充実
が必須であり,何としても,その環境整備を図る必要がある。
 一県完結型医療提供体制を構築する上で高知大学の果たす役割は大きく,期待するところで
あるが,しかし,大学の努力だけでは如何ともし難い,厳しい現実があることを考えると,医
師会としても違った切口から知恵を絞り協力して行くことを求められている。
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